AIGグループのLGBTへの取り組み〜従業員ネットワーク・グループの代表を直撃!~

ライター: JobRainbow編集部
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AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)といえば、日本でもよく知られた外資系保険グループです。
2016年3月からはAIU保険、富士火災海上保険の取り扱う傷害保険と海外旅行保険の死亡保険金の受取人について、同社が認めるパートナーシップ証明書の提示で簡単に受取人指定が可能に。さらに2016年5月には社員の福利厚生の結婚および配偶者の定義に同性婚を追加。今年(2017年)の東京レインボー・プライドでも大きな存在感を発揮しており、今もっとも注目されているLGBTフレンドリー企業の一つです。
こうした驚くべきスピード感で取り組みを推進するAIG。そのLGBT施策について、従業員ネットワーク・グループのリーダーと採用のご担当者からお話を聞いてきました。

今回お話をお伺いするのは、
AIG Japan LGBT & Allies Rainbow ERG(従業員ネットワークグループ)代表の川野さん、副代表の水谷さん、
AIGビジネス・パートナーズ株式会社採用企画部部長、James Rylandさん
の3名です。

1.AIGのダイバーシティへの取り組みと風土

採用企画部部長のJames Rylandさん

「違いを競争力に」という理念からもともとダイバーシティを強く意識する社風があるようにうかがえるのですが、それはどのように培われたのか、またどれがダイバーシティ施策にどう生かされているのか教えてください。

Rylandさん(以下敬称略):AIGはグローバル企業としてダイバーシティを重要視しており、ビジョン・ミッション・バリューにもその考えは盛り込まれています。ジェンダーやワークライフバランス、障がいやジェネレーション、LGBTといった取り組みを行うダイバーシティ・カウンシルという組織があり、LGBTは様々な取り組みの中の一つという位置づけです。働きやすい環境づくりに力を入れており、具体的には在宅勤務やフレックス勤務、時短勤務などを利用することができます。こうした施策は会社の成長にもつながると考えています。

人事としてLGBTに取り組むことの意義について、どうお感じになっていますか。

Ryland:昨年からAIGのLGBTへの取り組みについて、採用説明会とエージェントへの説明会で必ず取り上げるようにしています。今年の東京レインボー・プライドのパレードには内定者にも参加してもらい、このような取り組みをしている会社で是非働きたいと思ったなどというポジティブな反応が得られました。保険業界は一般的に保守的だというイメージがある中で「AIGってこんな会社なんだ」といい意味で驚いてもらえることに意義を感じます。

Rylandさん個人としてLGBT施策へ取り組む中での気づきや学びはありましたか?

Ryland:私はイギリス人であり、またイギリスではLGBTに対する理解が日本より進んでいるので、人種や性別などを平等に扱うべき、という観点をもともと持っています。日本ではまだ環境が整っておらず、カミングアウトしている人も少ないと感じています。

多くの当事者やアライが参加された東京レインボー・プライド2017のご感想を教えてください。

川野さん(以下、敬称略):レインボー・プライドへの参加は今回で5回目になりました。2015年の九州、2016年の東京・関西・九州、そして2017年の東京です。社内の認知も徐々に広がり、今回はグループ4社全ての社長兼CEOをはじめ、執行役員など経営陣の皆さんから新卒社員まで、合計約90人もの社員とご家族が参加してくださいました。その数に驚きましたし、皆さんが心から楽しんで私たちのサポートをしてくださっているのがひしひしと感じられて嬉しさが込み上げてきました。

2.社内従業員ネットワークのリアル

LGBT&Allies Rainbow ERG代表の川野さん

従業員ネットワーク・グループがあるとお聞きしました。社内向けのネットワークは、日本にある企業ではまだまだ珍しいものですが、どのように発足したのでしょうか。

川野:2013年にまず、ワーキング・ファミリー従業員ネットワーク・グループが発足しました。そこに加入して活動をしているなかで、LGBTのグループも作りたいと思うようになったのですが、当時は他の当事者を知りませんでした。

2015年9月にAIGグループが九州の代理店からLGBT対応や支援を行うよう提案を受けたことをきっかけに、2015年10月に社内でマネジメントメンバー向けにLGBTの勉強会を開催することになりました。私は連絡を受け、当時勤務地が富山でしたが駆けつけました。その会場で、今の副代表の水谷さんをはじめいろいろな方にお会いすることができました。そこで「LGBT当事者と支援者の従業員ネットワーク・グループを作りたい」という話をしましたら、2015年11月の九州レインボー・プライド参加報告のイントラ記事の最後でグループ立ち上げにあたってのメンバー募集を掲載してもらうことができ、2016年2月にグループが発足しました。

発足にあたって苦労したことはなんでしょうか?

川野:グループを作ろうと思ってから、一人で時期を待っていた時間は長かったです。ただ、その時間を取り戻すかのように、会社としての取り組みが始まってからは驚くべき速度で進みました。

団体の規模や今後の取り組みについて教えてください。

川野:13名の運営リーダーと、2名のエグゼクティブ・スポンサー(役員)、約160名がメンバーとして登録しています。

水谷:今年はこの後、昨年に引き続き関西・九州のレインボー・プライドにも参加を予定しているほか、今年初めて、従業員ネットワーク・グループからの提案により、7月に予定されているレインボー・リール映画祭への会社としての協賛が決まりました。映画祭にて出展されるブースを従業員ネットワークが運営する予定です。また、引き続き社員の理解を深める活動を行っていきます。

AIGのそういったスピード感のある取り組みは、もともと会社としてコミュニティ主導でやっていこうという方針があるからなのでしょうか?

水谷:経営陣からのトップダウンの取り組みと、従業員が主導でやっていくボトムアップの取り組みがあり、双方あるからこそスピーディーに物事が進むのだと思います。会社間でやっていることはそれぞれ違うのですが、たとえば私の所属しているアメリカンホーム保険では人権について学べるeラーニングを全社員対象に実施していますし、各社それぞれの取り組みもあります。

代表・副代表として、メンバーの皆さんにはどんなことを感じますか?

川野: メンバーはアライ(支援者)として、LGBT当事者のことをよく知りたい、より理解したいと思ってくれていると感じます。運営リーダーにはLGBT当事者もアライもいるのですが、自分が当事者であることを意識しないくらい自然に接してくれています。おかげでこのグループは、自分らしくいられる大切な場所になっています。

LGBTグループ活性化の秘訣はなんでしょうか?

Ryland:人事の視点から見ても、皆さん毎回楽しく活動されているのが印象的ですよね。

水谷・川野:そうですね、グループでの交流は本当に楽しいですよ!もちろんLGBTの問題はセンシティブではあるのですが、そこについてはきちんと学んだ上で、皆さんに楽しんでもらうことが活性化の秘訣かと思います。楽しさでできているといっても過言ではないかもしれませんね。まず興味を持ってもらい、活動に参加してもらう、その上で実感しながら理解していくというのが一番だと思います。

3.外へも広がるネットワーク

LGBT & Allies Rainbow ERG 副代表の水谷さん

会社内で、従業員ネットワーク・グループに入っていない社員への情報発信は行っておられますか?

水谷:イントラネットに活動報告を掲載しているほか、イントラネット内のダイバーシティ・インクルージョン専用サイトでグループのビジョンや活動内容、紹介ビデオなど詳細を掲載しています。またLGBTの他に従業員グループが4つありまして、それぞれのグループの発信物の中にレインボー・プライドの情報を入れてもらうなど、様々なチャンネルを通じて情報発信をしています。

川野:昨年は当事者3人によるパネルディスカッションを開催しました。これはレインボー・リール映画祭のチケットプレゼント企画で映画を見に行ってくれた社員から、映画もいいが、職場などを舞台とした、LGBTをもっと身近に感じられるイベントも開催してほしいという提案があったことがきっかけです。当事者3名が自分の生活や身の周りのことを話したところ、大変好評でした。

従業員ネットワーク・グループの発足は、社内の福利厚生整備に対してよい影響があったのでしょうか?

水谷:従業員ネットワーク・グループも福利厚生の変更も、ほぼ同時に進みました。ネットワーク発足が2016年2月、福利厚生の変更が2016年の5月でした。これはとても珍しいケースだと思います。会社が、一つずつ取り組みを進めるのではなく、一気にできることを全て取り組むという方針を進めたことで、福利厚生だけでなく、保険金受取人の対応や、従業員・代理店への教育、レインボー・プライドの協賛といった4つの取り組みが同時に進められました。

取り組みを進める前後で、働きやすさや社内の居心地に変化はありましたか?

水谷:私は以前から社内でカミングアウトをしていたのですが、カミングアウトをしたことで働きづらさを感じたことはもともとなかったんですね。自分はとても恵まれているな、寛容な人たちが多いなと思っていました。従業員ネットワーク・グループの活動を開始してからは、会社のLGBT対応について意見を求められるようになり、注目いただけるようになったので、当事者としての個性がプラスに働いていると感じるようになりました。

川野:2015年10月の勉強会の場でカミングアウトし、その後こうやって従業員ネットワーク・グループの代表をするようになって皆さんの知るところとなり、毎回自身について説明をしなくてよくなったことがありがたいですね。今では活動の認知度も上がっていて、私に女性のパートナーがいることも自然と受け入れてもらえています。以前は同性パートナーのことを異性パートナーとして話していたことも、今ではそうする必要がなくなったことでストレスが減りましたね。

当事者社員として、今後会社に求めたいことや課題などは感じていらっしゃいますか?

水谷:私自身は、課題は特に感じていませんね。活動2年目を迎えて実現したいことがどんどん具現化していますし、引き続き経営陣からは活動支援を頂けたらという思いはあります。

川野:私は保険商品への対応ももっと進めていくよう会社に提案していきたいと思っています。LGBTのお客様のためにできることが、もっとたくさんあると思っています。

4.LGBTと採用活動

採用活動について話すJamesさん

採用担当者として、人材獲得のためにどのようなことをなさっていますか?ダイバーシティ担当の部署とは、どう連携していますか?

Ryland:特別な配慮はせず、偏見なく平等に接するというのが第一ですね。会社が用意するエントリーシートなどのフォーマットには性別を記入する欄を設けていません。多様な人材を獲得するために、チーム・メンバーにこの考え方をしっかり伝えた上で、採用活動を行っています。

ダイバーシティ担当者とは、一緒に外部のダイバーシティ関連セミナーに参加するなどして採用活動について戦略を立てています。また、新卒者の研修の中にダイバーシティ・インクルージョンのパートを取り入れており、内容を一緒に検討しています。

会社全体として、求める人物像はどのようなものですか?

Ryland:人それぞれではありますが、バリューを出せる人を求めています。多様な観点から物を見られる人、きちんとコミュニケーションができる人、イノベーションを生み出せる人を探しています。

ありがとうございました!最後に就活生や求職者の方にメッセージをお願いします。

水谷:LGBT当事者の方がご自身の個性を活かせる環境がAIGにはあります。LGBTとして意見を求められることもありますし、従業員ネットワーク・グループもありますので、活躍できる環境は整っています。経営陣がLGBTの社員が働きやすい環境づくりを本気で考えてくれていて、AIGの事業戦略として掲げているActive Careとも結びつく取り組みの一つです。是非、挑戦してきてください。

Ryland:保険会社はお客様が困っている時に保険金をお支払する事業ですから、社会貢献ができます。多様なお客様がいることを意識して仕事に取り組んでいく必要がありますが、そういった意味で、ダイバーシティに積極的に取り組んでいる保険会社として魅力を感じていただければと思います。

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