日の丸交通のLGBT施策!トランスジェンダーが活躍する職場のつくり方

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日の丸交通のLGBT施策!トランスジェンダーが活躍する職場のつくり方

はじめに

はじめに
最近、女性のタクシードライバーが度々メディアに取り上げられるようになってきている。皆さんも目にしたことがあるのではないだろうか。

しかし、タクシー会社には男性中心的な価値観をもっている企業が多く、すなわち女性や外国籍社員を増やすといったダイバーシティ施策がなかなか進まない業種のひとつだ。

そんなタクシー業界でひときわ目立っている企業が「日の丸交通」だ。
ホームページを見ると真っ先に「日の丸交通は、ダイバーシティ経営を推進しています」という文字が目に入り、クリックした先のページには女性や外国人だけでなく、セクシュアルマイノリティ社員の多様性を認めて活かすという代表取締役の言葉がある。タクシー業界の中では貴重な取り組みだ。

今回は日の丸交通で働くトランスジェンダー女性の長本さん・Tさんと、セクシュアルマイノリティ社員が楽しく働ける環境をつくっている三木さん(人事総務部)に話を伺った。

目次
1.日の丸交通との出会い
2.日の丸交通がLGBTの採用を始めたきっかけ
3.「日の丸交通は、女として働けるから今はとても幸せ」
4.これから入社する皆さんへ



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1.日の丸交通との出会い



「今まで両親に迷惑をかけてきたから、安定した職業に就いて安心させたくて」と話すのは、日の丸交通に入社して2年になる長本さんだ。
「数十年前に性別適合手術を受けたんですけど、それからずっと水商売をしていたんですね。」という長本さんは、銀座で自分の店を経営していたほどの腕前の持ち主だ。常連客も多かったが、いつしか生活リズムの崩れなどからお店の経営は難しいと感じ始めた。

「両親を安心させたいという思いもありました。水商売がきちんとした仕事ではないとは全く思わないけど、いわゆる『きちんとした仕事』をしてみたいな」と。そんなときに仲の良い友人に、タクシー業界を勧められた。「運転が大好きなの」と話す長本さんはタクシー業界の求人サイトに登録した。「偶然で日の丸交通に入社したんだけど、いつの間にか2年以上が過ぎちゃった」。
真面目で、なおかつ水商売で培ったトークスキルがある長本さんは「話に夢中で自分がタクシーを運転しているということを忘れるときもある(笑)」と冗談めかす。異業種からのチャレンジに勇気をもらえるエピソードだ。

一方、Tさんはタクシー業界で働き始めて22年になるベテランだ。
もともと働いていた自動車メーカーをやめてタクシー業界に入った時は、見た目も戸籍も「男性」だった。あるタクシー会社で働いているときに「自分は女だ」と自認し、運行管理者というドライバーをまとめる立場にあったTさんは、思い切って上司にカミングアウトした。
ところが、上司には「オカマのいうことなんて聞けないとは言わないけれど、とても受け入れられないし、会社として後押しできない」と言われてしまった。最初は我慢していたTさんだったが、一度気づいた違和感はそう簡単に拭えない。髪を伸ばし、女性ホルモンを投与していった。こうして徐々に自分らしさを開放し始めたTさんだったが、女性らしい見た目に近づくにつれて上司や同僚に少しずつ距離を置かれていった。

「タクシー業界は平均年齢が53歳と、とても年齢が高い職場なんですね。LGBTという言葉すら知らないような年代の人ばかり。そんな人たちに『実は女です』と伝えてもわかってもらえないでしょう?」。Tさんは、周囲の人の理解を得られないままその会社を辞めてしまった。
しかし当時40代後半だったTさんを採用してくれる企業を探すのはとても難しかったという。セクシュアルマイノリティ採用をしている企業さえも少ない中、40歳を過ぎた自分を採用してくれる企業を探すことはとても苦労した。

そんなある日、日の丸交通で働く長本さんについての記事(https://mainichi.jp/articles/20180528/ddm/013/100/002000c)を見つけ、「ここでなら働けるかもしれない」と思ったTさんはすぐに面接を申し込み、そして採用された。Tさんは「長本さんがいなかったら私はこの会社にも、この世にも、いなかった。本当よ。」と話す。
現在、Tさんは「お化粧もネイルもOKだから、ちゃんと女でいられる!」という環境でのびのびと仕事を続けている。


2.日の丸交通がLGBTの採用を始めたきっかけ


「タクシードライバーはサービス業としては底辺にいる感じですけど、僕はこんなに面白い仕事はないと思うんです」そう話すのは、日の丸タクシーでセクシュアルマイノリティに対する取り組みを始めた三木さんだ。

現在は人事総務部に在籍している三木さんは、かつて営業所長だったときに、長本さんの面接を担当した人事から相談を受けた。「女として雇うことが無理ならそれでもいい」と言っているという長本さんの話を聞き、本人のしたいようにしようとしたこの時の対応は今でも良かったなと思うとのこと。この出会いが日の丸交通を大きく変えるきっかけとなった。

長本さんに出会ってそのトークスキルや立ち居振る舞いに「なんて淑女だ!」と感じたという。「人生酸いも甘いもあったんでしょうけれど、それだけでなく、人との接し方における思慮深さや感性が違う。こういう人がタクシードライバーに向いていると思いました」。
三木さんは、トランスジェンダーを中心とする、セクシュアルマイノリティの採用を進めることになった。もともと自身がドライバーをしていた時も、よく明け方の新宿二丁目でお客さんを拾っていた。二丁目を訪れるお客さんにも、そこで働く人々にも、多様な人間模様があると知っていた三木さんが「自分から率先して会社として動いてみよう」と決意するのは自然なことだった。

しかし、最初はうまくはいかない部分もあったという。中でも大変だったのが、各営業所への研修だ。平均年齢が高いタクシードライバー業界であるがゆえに「お客さんが気持ち悪がるだろう」「会社を潰す気か」といった強い言葉が三木さんに投げられた。全社員を対象とした研修を実施しているし、新入社員研修でも必ず三木さんがLGBT研修の時間を設けるなど、社内への理解は着実に広めている。しかし、いかにこの昭和な価値観を変えていくか、まだまだ道半ばの課題だと認識している。そのためにもまずはLGBTの社員を増やしたいと考えている。ありがたいことに社長の強いサポートの下、このプロジェクトは少しずつ進められ、長本さんの入社以降、LGBT採用として50人以上を面接、5人の当事者が入社し活躍している。

また、すでに日の丸交通で働く社員にももちろん当事者はいる。セクシュアルマイノリティ社員に向けた相談窓口を開設した際は、非常に反響が大きかったという。窓口となっている三木さんは、社員たちから、同性愛者であることやトランスジェンダーであることを打ち明けられ、社員それぞれと向き合って対応してきた。

「『えーお前が!?』なんてことはたくさんありますよ。『で、どうしたい?』と聞くと、『このままでいい。話を聞いてもらえただけでよかったよ、ありがとう』と言ってもらうことがほとんど。打ち明けられたことは絶対に墓場まで持って行きます。誰にも言いません。そして本人がどうしたいかを一番大事にしていますね」
「その中でも、数人、在職しながら性別適合を望んでいる人がいます。相談中ですけれど、営業所を移るかどうか、性別移行のタイミングはどうしたいか、グループ会社への出向も含めた様々な選択肢を検討しています。細かい面まで要望を聞き、本人のペースに合わせたサポートをしています」。

最初の取り組みとなった長本さんの入社の際には、営業所に在籍する女性従業員を全員集めて会議を開いた。更衣室の使い方などで猛反対を受けることを覚悟していた三木さんだったが、3人をのぞいて全員から温かい言葉がかけられ、反対していた3人もやがて同僚たちに説得された。現在は長本さんを「旅行に行こうよ!」と誘う同僚もいるくらいだ。
実際に職場に人がいて、会社として応援する環境があれば、それが「普通」になる。世田谷事業所にできたこの環境を、会社全体に広げていくことを目指している。

「セクシュアルマイノリティである面接者の方からもたくさん教わりますよ。長本さんやTさんからももちろん、社員から相談を受ける中でも、日々気づかされることがありますし、学ぶことだらけ。自分自身のセクシュアリティについても当たり前が揺さぶられるし、価値観にとらわれることもなくなりました」。
トランスジェンダーの方への取り組みは少しずつ進んでいるが、「同性愛者への福利厚生は、まだまだ不十分と感じており、これから増やしていかなければ」と、三木さんの熱い思いはまだまだ消えることがない。


3.「日の丸交通は、女として働けるから今はとても幸せ」


このように、三木さんを中心に社員一人ひとりに向き合って改革を続けた結果、日の丸交通では性自認に沿った制服を選べ、通称名の使用も可能となった。また、現在も経営陣や管理職層はもちろん、新人研修の際にも必ずLGBT研修を行っている。日の丸交通の目指す理想なダイバーシティ施策としてはまだ道半ばなのかもしれないが、「営業所では女として日々働けるので、毎日の点呼で呼ばれるだけで幸せ!」と語った長本さんの言葉が印象的だった。
タクシー業界は価値観が古くて労働環境が厳しく、同僚と関わる機会があまり無いと思われがちだが、日の丸交通はどこを見渡しても皆「笑顔」で生き生きと働いている。

Tさんは、日の丸交通に入った当初は、管理部門の対応が追いついておらず、傷ついたり憤る場面がなかったわけではないという。しかし、最近はそういうことも減ってきた。その理由を聞くと「お客さんのおかげ」と即答した。
「杖をついた高齢者のお客さんに『女性のドライバーさんなのね!嬉しいわ!』と言われたり、男性のお客さんに『綺麗なネーチャンだね!』『楽しかった、また乗せてね』と言われたりすることがとっても嬉しい。本当に毎日幸せを噛み締めています」と話す。

全ての営業所にロッカールームと休憩室があるのはもちろん、保育施設と提携している営業所も増えており、女性や外国人、LGBT、そして夢追い人まで、全ての社員が働きやすい環境の整備が進められていることが、この生き生きとした笑顔を生んでいる。多様性を尊重し、互いにそれを認めあえる会社を目指して、日の丸タクシーの取り組みはまだまだ続くのだろう。


4.これから入社する皆さんへ


最後に、日の丸交通への入社を考えている皆さんへメッセージをいただいた。
Tさんは「待ってました」、と力強く語ってくれた。「タクシーっていうと、昔は会社のお偉いさん、お金持ちの人がお客さんでした。それが今、年配の人や体の弱い方、お子さんなど、本当に必要とする人のための移動手段になっています。そういう方のための仕事ができる、それはとてもやりがいのあること。お客さまに直接『ありがとう』と言ってもらえることが、この仕事の一番の醍醐味であり、モチベーションですね」。

「それに、女性ドライバーというだけでお客さんに安心してもらえる時代になりました。その点、MtFの方には特に、積極的になってもらいたいって思います。『きれいなお姉さんでよかった〜』なんて言ってもらえる。もちろん、タクシードライバーは簡単な仕事ではないです。地理を覚えて初めて、乗客とのコミュニケーションができる。そこからさらに『プロのドライバー』になるには、自分の勤務時間をいかに無駄にしないでお客さんと向きあえるか、いかに自分を磨けるかという勝負になってきます。運転が好きじゃなくても地理が好き できちんと勉強する根気があるならば、地方出身でもやっていけるんじゃないかな」。
長本さんからのメッセージは、と聞くと「ないです!全部言ってくれたから」と。「ほんとに楽しいですよ。つまんないのはお客さんがいない時くらいですね(笑)」。

また、三木さんは「まだまだ全員が理解があるわけではない。そういう環境を変えていきたいと思っています。タクシー会社の中でも日の丸交通は、すごく明るい雰囲気で活気があります。自分自身がいくつかのタクシー会社を渡り歩いてきて今ここで初めて長続きしているのは、そういう居心地の良さがあるからでしょうね。腐心しながらもLGBTという新しい取り組みを進めようと思えていることも、日の丸交通のタクシードライバーには『夢がある』と思えるからです。」理解を得るには時間がかかる状況にも直面するだろうが、今後さらに「セクシュアルマイノリティに対する壁のない企業づくり」を目指して日々奮闘していく。

長本さんやTさんの入社がきっかけで日の丸交通が大きく変わったように、日の丸交通には社員の挑戦に寄り添って、誰もが生き生きと働ける会社を共に創り上げていくポテンシャルがある。次はあなたが、新しい変革を起こす一人になるかもしれない。このインタビューを読んで、一歩踏み出す勇気をもらえた人がいれば、何よりだ。

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