丸井グループのLGBTとダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み ~課長の井上さんに聞いてみた!~

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丸井グループのLGBTとダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み ~課長の井上さんに聞いてみた!~

東京レインボープライド2016の様子。MODIをバックにパレード


写真出典はこちらの記事

はじめに


丸井グループといえば、マルイやモディといったショッピング店舗でおなじみの企業です。よく知られた小売業だけでなく、フィンテック事業や空間プロデュース事業にも多角的に進出しています。

お客様や社員など、ステークホルダーすべてのダイバーシティ&インクルージョンを大事にした「共創価値」経営を進めており、特にダイバーシティへの取り組みについて注目を集めている企業グループです。

2016年度、日本の未来と丸井グループの役割を考える「マルイミライプロジェクト」では、「ダイバーシティ&インクルージョン」がテーマとなり、本社において「ダイバーシティウィークを」を開催し、LGBTの理解と支援に向けた展示を行いました。小売ならではのテーマとして商品開発にも積極的です。シューズのカバーサイズの拡大やLGBT就活生応援スーツの販売など、次々とあらたな需要を創造してきました。

2017年5月に開催された「東京レインボープライド2017」にも協賛し、店頭にレインボーフラッグが掲げられたことは読者の皆様の記憶にも新しいと思います。

ダイバーシティのみならず、4つの重点テーマからなる施策をつうじ、インクルーシブな社会づくりを目指している丸井グループ。

参考:丸井グループ サステナビリティへの取り組み

LGBTに関連する取り組みを中心に、「インクルージョン」を大きなテーマに据えた経営と事業の真髄について、サステナビリティ部の課長、井上様よりお話を聞いてきました。井上様は「マルイミライプロジェクト」のご担当でもいらっしゃいます。

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目次
1.「インクルージョン」のルーツはお客様
2.社内から社外へと広がるインクルージョンの輪
3.ステップを重ね、レインボープライド出展へ
4.LGBTへのアプローチ、今後の展望
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1.「インクルージョン」のルーツはお客様


―ダイバーシティ&インクルージョンについて、どういった経緯で取り組みをはじめ、ここ1年でどのような施策をなさったのでしょうか。
ダイバーシティ&インクルージョンという言葉は1年前より経営レポートに掲載し始めていて、そもそもそれ以前に「すべてのお客様に」というキーワードがありました。すべてのお客様に商品やサービスを提供できる企業になっていこう、という動きが10年前にスタートしました。マルイは、若者に向けたファッションを展開する業態で、いわゆる「DCブランド」、「赤文字系」、サマンサタバサなどを扱い、世の中に拡げたのがマルイでした。

しかし、日本が超高齢社会に入っていくと、トレンドの商品を大量に売っていくことは難しくなりました。そこで、小売業としてはターゲティングをするのではなく、より多くのお客様にご利用いただけるようにしていくのが一番なのではないかと改めて感じ、「すべてのお客様に」という理念へと大きく方向転換していきました。

若者向け中心だった業態だったのですが、まずはお客様の年代の幅を広げていこうと、ご高齢の方にもご利用いただける品揃えを実現していきました。例えば、ファッションのみならず雑貨や飲食店を増やす、店内の休憩場所を増やすということに加え、プライベートブランドでのサイズに目をつけました。シューズに関しては、成人女性の全てをカバーできるようサイズを取り揃えました。このように、お客様の幅を広げるサービスに注力していました。

その次に来たのが、ダイバーシティ&インクルージョンだったのです。年代の幅を広げることができた、しかし本当にこれが「すべてのお客様」なのだろうか?そんな時、ある会合で社長の青井が株式会社ミライロ(ユニバーサルデザインのコンサルティングファーム)代表の垣内さんと話したとき、本当の意味での「すべてのお客様」に関してレクチャーをいただいたのです。なかなか障害のある方が自由に楽しく買い物できる環境が日本にはなかったという話をお聞きしました。

そこで2015年の10月より、ユニバーサルマナーという部分から全ての人にやさしいサービスを提供する取り組みを始めました。博多マルイではおもてなしのスキルを磨き、実際に障害のある方にヒアリングを行い、ハード面を改善するといったアプローチをしました。

また別のタイミングで、社長が杉山文野さん(東京レインボープライド共同代表理事)とお話をする機会がありました。杉山さんのお話をうかがい、「すべてのお客様」と謳っていながらも、人口の8%もいると言われるようなLGBTの方々に真剣に向き合ったことがあるのかな、という気づきを得ました。

ユニバーサルデザインをしたり、杉山さんと話したりした際に、われわれが障害のある方、LGBTの人たちに何かをしてあげるということではなく、知って理解して、その方達と一緒に考えながら、いいサービスやいい商品を作って、お互いに喜んでいこうという姿勢が大事だと分かってきたのです。何かをしてあげる、ではなくて、逆に力をもらえるという気がいたしました。ここからダイバーシティ&インクルージョンという言葉を使い始めました。
 
―丸井グループのインクルージョンの中には見慣れないテーマもたくさんありました。例えば金融インクルージョンやエコロジカルインクルージョンなどは、まだ社会に深く浸透していないと思いますが、どういった展望で取り組んでいらっしゃるのですか。
お買い物に不便を感じていらっしゃったお客様にどうやって快適な環境を提供するかということが先ほどの小売でのインクルージョンだったわけですが、金融の事業も同じ考えに基づいています。クレジットカードを持ちたくても持てない若い人が多かった状況で、リスクの低い範囲で提供し、より多くの方にフィンテックの利便性を体験してもらいたいという考えです。

また、都心とは違い、地方ではほとんどクレジットカードをすすめられることは少ないようですが、地方のお客様にも、今の時代のフィンテックの利便性を我々の力によって体感していただきたいと考えています。

―地方の浸透はどのように進めておられますか。
エポスカードのみならず、色々な提携カードを作っています。ソフトバンクホークスカード、アパホテルカード、ハウステンボスカードなどです。またモレラ岐阜、名古屋の星ヶ丘テラスなどのショッピング施設でもカードを作っています。

丸井という背番号にとらわれずに、なるべく全国じゅうにカードを届けており、よりネットワークを充実させるということを真剣に考えています。今後、金融を通じたインクルージョンは、小売のインクルージョンとも協同しながら進めていくと思います。

2.社内から社外へと広がるインクルージョンの輪


ダイバーシティブックの中で触れられていました、多様性を活かすマネジメントはどのように管理職層に浸透させておられますか?
小売・カード・システム・物流など、会社の壁を越えたグループ横断の人事異動を積極的に行っています。この「職種変更」を主たる方策として、実際に多様な視点を体感させるように留意しています。同じ部署にいて同じ仕事をずっと続けていると、どうしても頭がかたくなってしまうので、グループ会社の中でとにかくジョブローテーションを多くしています。

ただ単なるゼネラリストでは意味がなくて、例えば、小売販売に携わっていた時の知見をカード事業に携わった際に生かすなど、お互いの仕事でつけたノウハウをイノベーションのために使うことができます。

多様な職種を経験することで、多様な視点から仕事を見ることができますし、社内の活気を出し、結果として個人の中にも多様性を培っていくことができます。このように、ワーキングインクルージョンは卓上で理解することよりも、ダイバーシティを体感することで培われるものだと考えています。

―井上様が担当されているマルイミライプロジェクトはどのようなものですか?
もともとは「三方よしプロジェクト」というものでした。日々仕事をしていると、どうしても足元の業務に追われてしまいがちになるものですが、そのような中でも広く社会的な課題を考えて、未来を見据えて企業として行動をしていこうということで「マルイミライプロジェクト」が発足しました。

北は仙台から南は大分からというように、全国のグループ全体の職場から約80名が集まります。昨年は盛り上がりすぎて毎月2回くらい集まったんですよ。メンバーは公募・立候補制で集め、年度によってメンバーは変えています。自主的に多くの社員に参加してもらっています。

社会の課題について話し合いながら、丸井グループとしてのアクションプランを考えるプロジェクトとなります。2015年度には少子高齢化、LGBTなどを含む7つの課題が取り上げられ、2016年度のテーマが大きく「ダイバーシティ&インクルージョン」になりました。これは大きなテーマなので2020年まで存続させたいと考えています。

全体は大きく4つの分科会に分かれていて、ユニバーサル、LGBT、パラスポーツ、外国人というテーマがあります。

例えば外国人をテーマとするにしても、こと小売業で言えばインバウンド需要など、様々な切り口がありますが、われわれは、まず理解をして、一緒に何かをするという方向で考えています。いわゆる流通における「外国人対策」とは違ったアプローチで考えていくわけです。 

パラスポーツ分野では、ブラインドサッカーにオフィシャルパートナーとして協賛しています。男子・女子日本代表のオフィシャルスーツをわれわれのプライベートブランドにて衣装提供をしています。2017年5月には女子日本代表が初めての海外大会で優勝し、感慨深いものがありました。

ブラインドサッカーの壮行会を有楽町の広場で開催したのですが、その際OUT IN JAPAN(カミングアウトしたLGBTの方々のポートレートの展示プロジェクト)テーマソングを歌った清貴さん(シンガーソングライター)がゲスト出演で応援してくださり、ある意味パラスポーツとLGBTがシンクロした瞬間でした。

「少数者」と区分して何かをしてあげるという姿勢ではなくて、みんなが集って、ひとつのことをしていく。これからもそういう取り組みを続けていきたいと思っています。
 

3.ステップを重ね、レインボープライド出展へ


―東京レインボープライドに2016,17年と協賛されていますよね。前年と比べていかがでしたでしょうか。協賛のきっかけはどういった経緯なのでしょうか。
2016年の頭に杉山文野さんに講演をいただいて、LGBTに関してはそこからのスタートだったのですが、レインボープライドの開催が2016年5月頭だったため、当初は何をやっていいのかわからなかったのです。

それでも何かやらねばと、まずはレインボーフラッグを掲げるところから始めました。もちろん社員の理解は完全ではなかったけれども、ともかく「すべてのお客様に喜んでいただけるように」という理念は確かでしたので、まず掲げたのです。「私たちは、3割は理解している、残り7割はこれから頑張ります」というスタンスでもいいじゃないか、と。とはいえ、レインボーフラッグ、OUT IN JAPANの写真展、レインボーバッヂをやるぐらいの取り組みにとどまっていました。

わからないことも多いままに掲げたレインボーフラッグでしたが、SNS反響がすごかったんですよ。例えば、「丸井の決断に拍手」というコメントが寄せられていました。やはり小売業という消費者との接点が多い会社が行動したことにこそ意味があるのだと思いましたね。「ゲイの人がお客にいるなら丸井で買い物するのは嫌だ」というお客様がまだいるかもしれないにせよ、そこであえて掲げたという点で、「決断」と言っていただけたのかと思っています。

お客様に喜んでもらえているという実感を得て、その後、うちのビジネスコンテンツと、社員のホスピタリティをかけあわせて、何か利益や価値につなげられないかという段階になりました。

その時、既に展開していた19cm~27cmまでの幅広いシューズサイズとつながったのです。実は杉山文野さんのお知り合いのトランスジェンダーの方が、「文野さん、マルイで講演したなんて凄いね、だってマルイはわたしの履ける靴を作ってくれているんだ」ということを言ってくださったらしく、そんなところでLGBTの方の役に立てていたのだということに気づきました。

九州レインボープライドで協賛した際は、シューズを50人くらいの方に試着していただき、その場で購入していただいたFtMの方もいらっしゃいました。

「1時間じっくり試着をして、セクシュアリティも打ち明けて、初めて百貨店の方と素直に楽しく会話ができた。私の夢が叶った。」というコメントを頂いて、「普通に靴を販売してるだけなのに夢を叶えられるんだ。」という思いに至りましたね。

LGBT応援就活スーツのイベントを行った際に、「丸井でこんなキャンペーンをしているなんて知らなかった。」という声もあって、それならば東京レインボープライド2017にブースを初出展しようという運びになったのです。

この一年間の中でいくつものステップを踏んでいるのですが、当事者から、非当事者から、様々なコメントを頂き、力をもらいながら次のステップに進めています。
 
―取り組みに際して、最初の一歩にはハードルがあるものと思いますが、「まだ早いのではないか」といった声はありましたか?どう解消していったのでしょうか。
実はそんなにハードルはなかったんです。たとえば社員の3割が理解しているという場合、取り組むことにリスクを感じているのが7割いる可能性があるというだけで、そういう状況は他のCSRでも起こりうるものであって、単にわたしたちから始めればよかった。

一番ハードルが高かったのは違う部分です。「レインボーフラッグは社会貢献だしボランティアだから良いね」という声がなかなか減らなかったんです。ビジネスと結びつけて、お客様に対してちゃんとサービスを提供するという意識が必要だと思うのですが、「社会貢献のためなのに、ビジネスって、それは人としてどうなの?」と眉をひそめる考えがまだ根強かったです。LGBTに対してウェルカムな姿勢は大事だけれども、企業が取り組むにあたってはビジネスにしないと、同じことを来年再来年と続けて大きくしていけないわけですが、これを社内に浸透させるのが大変でした。

それでも、実際にスーツやパンプスが売れていくと、利益も出て、販売している自分も楽しい、そういう相互の関係性が可視化されてきました。そこから理解も一気に進みました。

4.LGBTへのアプローチ、今後の展望


―小売業界の企業として、「レインボー消費市場」に対し、マーケティングの視点からポテンシャルを感じられることはありますか?
あまり市場を意識しているわけではありません。それでもポテンシャルを感じていて、2つの理由があります。1つ目が、他社があまりやっていないからということ。2つ目が現に困っている人がいるということです。ポテンシャルを感じる理由は、パーセンテージではない。

例えば、「19.5cmのパンプス購買層は全体の1%で売り上げになるの?」と聞かれることはあります。でも本質は全体に占める構成割合ではないと考えています。

数%の人が困っていて買い物が苦痛だと言っているんだったら、そこにサービスを提供し、みなさんにご利用いただければ数百万人になります。

この言い方は、一歩間違えると「利用している」と思われがちではあります。でも今はそういったサービスを増やしていく段階だと感じています。逆に、インクルージョンがもっと進んで、だれもが困らずに自分に素直に買い物ができる場所があったり、サービスがあったならば、われわれはレインボー消費市場にポテンシャルを感じなくなってしまうかもしれないと思います。
 
―社内の環境整備や社内制度について、また採用活動におけるLGBTへのアプローチについてお聞かせください。
われわれのインクルージョンの取り組みに刺激をうけて、志望してくださっている方が非常に多いです。企業理解の中でユニバーサルデザインやLGBT、マルイミライプロジェクトに共感していただいて応募してくださる例があります。博多マルイのレインボーフラッグに興味をひかれた、という方もいらっしゃいました。やはり総じて、自分の仕事がどう社会に役に立てるのか?誰に喜んでもらえるのか?ということに敏感な方から関心を持っていただけている感触があります。

今年度も採用面接がありましたが、面接官の60名に対して、私自ら研修を行いました。コンパクトな研修ではありますが、LGBTは「見えない存在」であって、つねに意識を持って面接をして欲しいという話を伝えています。

社内制度に関しては今年から取り組みを始めます。私はよく、「風土・ハード・制度」と言っています。まずなによりも風土を作っていくことによって、商品や施設作りにつながり、制度に結びつくという発想です。いきなり同性カップル向けの制度を作ったとしても、全然利用がない例はある。風土づくりを先行してやっていき、制度が単に縛り付ける規則になってしまわないようにしています。

丸井では、風土作りによって生産性が上がっています。東京レインボープライド2017に参加した後の社員は、「丸井ってこんなに良い会社なんだ!」という感想をあらためて持っていたようです。このように仕事に対するモチベーションアップにもなっています。ともかく、今年からいよいよ少しづつ、制度に着手していきたいと考えています。

―「制度」の部分で、基礎となる社員向けの研修についてはどれくらいされていますか? 
社員向けの研修はかなりやっています。ユニバーサルマナー検定の受験者は2000人に達する勢いです。LGBTに関しては、「LGBT研修」ではなくて、様々な形態のダイバーシティ研修をしていまして、全国で800人が受けています。
研修もいいけれど、レインボープライドなどの場で接客を行えば、一発で結果が出ます。研修の中でもできるだけリアルな場を設けるよう工夫しています。

最近ですと、当事者8名の方を招いてお買い物についての悩みを語ってもらう場を設けるなど、研修の仕方も変わっていっていると思います。LGBTという総枠で理解ができても、結局はひとりひとりの話を聞かないと本当にいいサービスに繋がっていかないと思っています。
 
―最後に、読者の方々へのメッセージをお願いします。
丸井グループは、全ての方々が、素直に楽しくお買い物をされたりサービスを利用できる社会にするため、企業として進化してゆきます。一緒になって進めていくため、アドバイスをいただければ嬉しいです。


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